私がこの映画を最初に見たのは、サーフィンに明け暮れる登場人物たちとそう変わらない年齢の頃でした。

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この映画には青春の光と影が描かれていますが、当時の私の心に焼きついたのは光の部分ばかりだったように思います。

カリフォルニアのまぶしい日差し。
サーフィン。
セクシーで可愛い女子たち。 
カフェのハンバーガー。
パーティのバカ騒ぎ。
酒、
セックス、
ケンカ。

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そんなキラキラした映像の断片が、日本でショボイ青春を送っている若者(私)の胸に突き刺さってきました。
 ああ、やっぱりアメリカの若者たちはあんな華やかな青春を謳歌しているのだ。
 20ぐらいまで、私は素朴にアメリカに憧れていました。

それがいつの頃からか、アメリカは憧れの地ではなくなっていました。
アメリカも、私も、変わってしまった…。

主人公のマットは久しぶりに海沿いのカフェで妻と食事をとろうとしますが、そこはもう経営者が変わっていてチーズバーガーは出せないといいます。
テーブルの上でお香が焚かれているヒッピー好みのカフェ。

ベトナム戦争を体験して、アメリカは苦悩していました。
今までの自分たちを素直に肯定できなくなっていたのです。
自信をなくしたアメリカは、あの底抜けの明るさも失っていました。

輝いていたマットのサーフィン・テクニックは時代遅れなものになっていました。
羽振りが良かったベアは、海岸にたむろするのんだくれのホームレスに身を落としています。

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 変わりゆく時代の中で変わらなかったのは、打ち寄せる波とマットたちの友情でした。

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ビッグウエンズデーへの挑戦を果たしたマットは、自分のサーフボードを話しかけてきた若者に あげてしまいます。
マットは青春と決別し、新たな世代に青春を託したのです。

この映画が単なるサーフィン映画で終わらなかったのは、変わりゆくものを描くことによって、変わらないものを浮かび上がらせたからなのかもしれません。
 
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ジャン=マイケル・ヴィンセント
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21

 

ビッグ・ウェンズデイ(Big Wednesday)
ベイジル・ポールドゥーリス
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2010-06-15