筋肉にはどんな能力が秘められているのか…。

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こちらは橋本マナミさんの筋肉。
人間の体には全部で400種類の筋肉があります。

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今回特別に開発した顕微鏡にハイビジョンの16倍高精細な8Kカメラを取り付け、生きた体の筋肉を撮影しました。

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筋状のものが筋肉の細胞。
長いものでは10cm以上あります。

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トレーニングをするとこの細胞が成長し太くなっていくのです。

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最新の研究によって、筋肉もまた様々なメッセージ物質を出していることがわかってきました。

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筋肉のメッセージ物質の発見のきっかけになったのがこちらの牛。
筋肉の成長をコントロールするある物質が働いていないため、普通の牛の2倍の筋肉がついています。 

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その物質はミオスタチン。
筋肉から初めて発見されたメッセージ物質です。

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ミオスタチンのメッセージ:「成長するな」

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筋肉がありすぎると排水溝から水が抜けていくようにエネルギーをどんどん浪費してしまう。
だから、筋肉はメッセージ物質を使ってエネルギーの浪費を抑えている。

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ミオスタチンの発見をきっかけに、筋肉が出すメッセージ物質に関する報告が急増。
研究論文は去年だけで100本以上あります。

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「がんの増殖を抑える」、「うつ症状を改善する効果がある」などの意外な研究報告が相次いでいます。

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中でも驚くのがアメリカの国立老化研究所などのチームが発表した「筋肉の働きで記憶力が高まる可能性がある」という研究報告。
そのメッセージ物質の名はカテプシンB。

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4か月間カテプシンBの量を測定し、記憶力とどう関係するかを調べました。
運動などでカテプシンBの量が増えた人ほど記憶力テストの成績が向上したそうです。

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研究チームはカテプシンBが記憶をつかさどる海馬の神経細胞を増やす働きがあると考えています。

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筋肉は単に体を動かす道具ではなく、今思いもよらないスーパーパワーが浮かび上がってきています。

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体の7割を占める脂肪と筋肉は、どちらも様々なメッセージを体に送って私たちの健康を維持してくれる大切な”臓器”だったのです。

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ここから先はさらに驚く話。
現代社会を生きる私たちの体の脂肪と筋肉が発するメッセージ物質に異常が起きている!?

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世界に6億人以上いると言われる肥満。
それが人類にかつてないほどの危機的事態をもたらしているのです。

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長い生物の進化の中で肥満を経験したのは人間が初めてではないか。

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人間が好きな時に好きなだけ食べられるようになったのは、歴史的にはごく最近のこと。

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いつもラーメン大盛を食べてしまう宮川大輔さん。
レプチンが出てるはずなのに、なぜ食べてしまう?
この疑問は研究者も追い求めている疑問。

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脂肪細胞は食べすぎて余った糖分や脂を貯えてどんどん大きくなっていきます。

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この時血液中のレプチンの量もどんどん増えていきます。

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食欲を抑えるメッセージ物質はたっぷり出ているはずなのに、なぜ食べすぎてしまうのでしょう?

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これは肥満している人の脳の血管の中。
血液中に大量の脂が漂っています。

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その脂が邪魔をして、レプチンが血管の外に出ていくことができません。

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どんなにレプチンがあっても脳に入りにくくなっていると考えられているのです。

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さらにレプチンが脳にたどり着いたとしても、レプチンを受け取る装置が鈍くなっており、メッセージに反応できなくなっているとも考えられています。

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レプチンが届いていないことを確信w

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次のVTRは「太り続けるとどうなるのか…」。

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レプチンがきかなくなり、食欲がコントロールできなくなって陥るのが、メタボリックシンドローム。

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メタボはメッセージの異常をもたらし、命に関わる病気を次々と引き起こします。

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アメリカ・ミズーリ州に住むブレンダ・オテイさんはメタボと診断された後心筋梗塞を起こし、現在は予防のために毎日15種類の薬を飲んでいます。

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肥満の人の脂肪細胞からはあるメッセージ物質が異常に放出されている。

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ミクロの世界に飛び込んで、その深刻な事態を目撃します。

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メタボの人の内臓脂肪の中。

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あたり一面に煙のように漂っているのは、大量にとりすぎた糖分や脂です。

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脂肪細胞は内部に脂を貯えて、もうパンパン。

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脂の粒が脂肪細胞の表面にぶつかっています。

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脂肪細胞は脂の粒を外敵と勘違いし、あるメッセージ物質を放出し始めます。

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脂肪細胞は誤って警告メッセージを放出してしまったのです。

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そのメッセージを受け取るのは免疫細胞。
免疫細胞は警告メッセージを受けて活性化し、戦闘モードに入ります。

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さらに免疫細胞は分裂し、自分自身も誤った警告メッセージを拡散します。

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「免疫の暴走」こそがメタボの本当の恐ろしさだったのです。

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膨れ上がった脂肪細胞の周りを敵を探して動き回る免疫細胞。

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暴走する免疫細胞は血管の壁の内部に入り込み、溢れた脂を発見。

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免疫細胞はこれこそが敵だと思い、脂を次々と食べ始めます。

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しかし脂はあまりにも大量です。

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パンパンに膨れ上がった免疫細胞は、ついに破裂。
あたりに免疫細胞が持っていた攻撃用の有毒物質が飛び散ります。

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それが大事な血管の壁を傷つけてしまうのです。

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こうして暴走した免疫細胞は体中の様々な場所を痛めつけ、心筋梗塞や糖尿病などの恐ろしい病気を引き起こします。

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日本の糖尿病の患者がついに1000万人に達する。

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薬を使わなくてもある臓器が免疫の暴走を抑える可能性が出てきた。

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その臓器とは筋肉。

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コペンハーゲン大学のベンテ・ペダーセン博士は免疫細胞の暴走を抑える物質を筋肉から発見しました。

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博士は足の筋肉を動かしたときにどんなメッセージ物質が出るか詳しく分析しました。

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その結果大量に見つかったのがILー6というメッセージ物質。

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IL-6が体の中でどんな働きをしているのか。
それを調べるため被験者に運動後に出るのと同じぐらいの量のIL-6を注射してみました。

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IL-6によって誤って出された警告メッセージが半分以下に減ることがわかりました。

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運動をすると大量のIL-6が放出されます。

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それを受け取るのは暴走している免疫細胞です。

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IL-6のメッセージ:「戦うのはやめて」

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免疫細胞の戦闘モードが解除され、飛び交っていた警告メッセージも静まっていきます。
こうして免疫細胞の暴走が収まるとペダーセン博士は考えています。

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私たちの体は動くことを前提に作られている。
動かずにいれば、筋肉からの大切なメッセージも出なくなり病気に陥ってしまう。

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食べ物が溢れている中で、体を動かす機会が減っている現代社会。
それは長い人類の歴史の中で想定外の事態。

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しかし、人体には想定外の事態も克服する柔軟な仕組みが秘められている可能性があるのです。

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IL-6は日本人が発見し、「免疫を活性化する」メッセージ物質として有名。
IL-6は状況によって働き方が変わるという報告が多数あり、詳細な研究が続けられている。

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脂肪と筋肉が重要なメッセージを出していることに驚いた。
それにプラスして自分でそれらを手助けするようなコントロールが大事。

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人間の体はほんとうに緻密にできている。

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3年前アメリカでレプチンが治療薬として承認されました。

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レプチンによる治療を始めてから食べ物に執着することがなくなって、元気になったアラニ・オズボーンちゃん。

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ジュリアン君もまもなくこのレプチンによる治療を開始する予定です。

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シリーズ人体第3集は「骨」。
12月3日(日)夜9時放送

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