「竹取物語」で思い出すのは高校時代です。
古文の授業で習いました。
最後の方、月から使者たちとそれを迎え撃つ地球人たちとの戦闘シーン(力に差がありすぎて戦いにはならなかったが)、ここが授業で当たる番だったので、必死で訳した覚えがあります。
古文の教師は50がらみのごま塩頭の長髪(作家風)…。
「女房がクリームを塗った手で漬物を触るから、移り香がして嫌だ」とか文句を言っていたのを思い出します。
そんな話は家でしろ、その前にお前の加齢臭何とかしろ、バカ。
クラスのみんなが嫌いな先生でした。
あの先生じゃなければ、もうちょっと古文、好きになれたかもしれない。

それはともかく、「竹取物語」は文学史上、重要な地位にある作品です。
日本最古の物語と言われていますが、最古のSFでもあります。
月から来たお姫様の物語を書くなんて、時代を考えるとその着想は突き抜けています。
作者は不詳ですが、紀貫之という説が最近有力のようです。
紀貫之は当代随一の歌人で古今和歌集の選者、最古の日記文学「土佐日記」の作者でもあります。
彼ほどの才人なら「竹取物語」の作者であっても不思議ではありません。 

 さて、「かぐや姫の物語」は、この「竹取物語」をアニメーション映画にしたスタジオジブリの作品です。

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八割方は原作通りだったように思います。
一番違うのは捨て丸という幼馴染のお兄ちゃんを登場させたこと。
原作にはないオリジナルキャラクターです。

大人になった捨て丸がかぐや姫と再会し、手を取り合って空を飛ぶ空中デートのシーンが出てきます。
このシーンは、妻子のいる身にも関わらず捨て丸は…と、世の女性のひんしゅくを買ったようです。
夢の中の話なんだから、そんなに目くじら立てなくても…。
誰にも叶わなかった想いというものはあるだろうし、せめて夢や妄想のなかで成就させてもいいのでは、と私なんかは思うわけですが…。
まあ、高畑監督は、男の視点で描きすぎたのかもしれませんね。
 kaguya1
 
それから、御門(みかど)がだいぶキモいキャラになっているのも原作とは異なります。
原作では、かぐや姫は御門を袖にする形にはなっていますが、彼を嫌ってはいません。
映画では遠慮なく御門をかなり嫌なタイプの男にしてかぐや姫をドン引きさせています。

一見二枚目風の御門ですが、顎が微妙に長いのが製作者の悪意を感じさせますw
 私は最初に見た時、御門は要潤がモデルだと思いました。
 だから、御門の声はぜひ要潤にやって欲しかった。

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原作の「竹取物語」では、御門は月に帰ったかぐや姫に不死の薬をもらったのですが、かぐやのいない世に不死であっても仕方ないと言い、一番高い山で焼いてしまうよう命じます。
それが富士の山で、その煙は今でも立ち昇っている、と結ばれます。 
他の同時代の文学作品にも散見されますが、平安時代ごろの富士山は噴煙をもくもくと吐き出す活火山だったようです。 
できれば、このエピソードも映画に取り入れてほしかった。
 
ジブリ作品の中では異色の画風でしたが、日本の物語にふさわしく、特に自然描写が良かったと思います。

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「姫の犯した罪と罰」をキャッチコピーにしていた割にはそのあたりは未消化だったような気がします。
罰は地上の生活でたくさんの悲しみを知ったことでしょうが、罪は何だったのでしょう。 
もっと大胆な新・竹取物語にしても良かったかな。

 
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