動物の寿命は、体が大きい動物ほど長いように見えます。

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しかし、この法則に当てはまらない動物もいます。
ハダカデバネズミの寿命は28年、コウモリは30年、人間は75年ほど。

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この謎を解くカギとして、血液中のある成分が注目されています。

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それは、リン。
腎臓が調節する血液の成分の一つです。

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血液中のリンの量が少ない動物ほど寿命が長いことがわかりました。

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リンは肉や豆などに含まれる重要な栄養素。

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血液中のリンの量が足らないと様々な病気を発症し、命に関わることもあります。
しかし、多すぎると老化を加速させてしまうことがわかってきました。

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リンの量と老化の関係がわかったのは、日本人科学者が見つけた不思議なマウスがきっかけでした。

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正常なマウスの寿命は2年半ほどありますが、老化加速マウスは2か月半ぐらいしか生きられません。

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遺伝子操作の過程で偶然生まれた老化加速マウスは、腎臓の中で働くある遺伝子が壊れ、リンを調節できなくなっていました。

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そのため血液中のリンの量が異常に増え、老化が加速してしまったのです。

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リンが老化を加速させるメカニズムは解明中ですが、血液中のリンの量が増えると血管の内側で「石灰化」という現象が進み、全身の血管が硬くなってしまうことが一因であると考えられています。

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腎臓の働きが悪ければ、老化が加速される。
逆に腎臓が健全であれば、寿命は延びる。

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リンの量を絶妙にコントロールしている腎臓が耳を澄ませて聞いているのは、骨からのメッセージ。
骨は体内のリンの貯蔵庫として、その量を常に監視しています。

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骨からの「リン足りてます」というメッセージを腎臓が受け取ると、

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腎臓はリンを再吸収するポンプの活動を停止して、血液中のリンの量を調節します。

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腎臓の複雑で精緻な仕組みが、私たちの寿命を決めていたのです。

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動物はリンがないと生きていけないが、多すぎると骨粗しょう症や動脈硬化の原因となる。

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腎臓の血液調節機能は長寿のカギ。

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世界の医療現場では、腎臓の状態を常に監視することの大切さが認識され始めています。

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イギリス・ワージング病院。
入院患者のポーリーンさんに急性腎障害の警告が出ました。

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感染症で入院していたポーリーンさんですが、最新の医療システムがなぜか腎臓の異常を検知したのです。

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急性腎障害(AKI)で腎臓の機能が急激に落ちれば多臓器不全を引き起こし、命にもかかわる深刻な状態になります。

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あるレポートによって、医療の世界に激震が走りました。
「先進国の入院患者の5人に1人は急性腎障害(AKI)になっていた」というものです。

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いったいなぜ腎臓以外の病気の患者まで腎障害を起こすのか?

それは体内ネットワークの要である腎臓ならではの理由があります。
腎臓以外の病気でもその影響が腎臓に波及してくるのです。

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例えば、心臓が心不全を起こして血流量が減ると、大量の血液を必要とする腎臓は大きなダメージを受けます。

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同様に腎臓は他の臓器とも深く関わっているため、どこが悪くなっても腎臓に悪影響が出ることがわかってきました。

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こうした関係は肝腎連関、心腎連関…などと呼ばれ、今医学の世界で大切なキーワードになっています。

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この連関ゆえに事態はさらに悪化します。
ネットワークの要である腎臓がダウンすると、今度は全身の臓器にその影響が跳ね返ってゆきます(多臓器不全)。
わずか数日で容体が悪化し、命を落とすことにもなりかねないのです。

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腎臓を守りさえすれば、救えたかもしれない命が数多くあったことがわかってきました。

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