子供の頃から散髪が嫌いでした。
父親が泣きわめく私の手をぐいぐい引張り、私を近所の床屋に連れて行くシーンが今でも鮮やかによみがえります。

散髪を終えた後、床屋のマスターがくれる一箱のガムが唯一の慰めでした。
オレンジの絵が描かれた小さな箱の中にはオレンジ色の丸い風船ガムが2個(だった気がする。今は4個のよう)。
お菓子のまちおかやドンキホーテなどに行くと、今もほぼ同じものが売られています。

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半世紀を超えるロングセラー商品ということになる…

高校生ぐらいになると色気づいて髪を伸ばすようになり自分でカットハウスなどを探して髪を切ってもらいましたが、あの鏡の中に自分がいて、その後ろに知らない人が立っているという状況はやはり苦手でした。

髭を剃ってくれるところもありますが、あれも苦手です。
鋭利な刃物を手にした見知らぬ人間に自分の喉をさらけ出す…とても危険です。

映画「ゴッドファーザー」ではマフィアのボスの一人が床屋に化けた殺し屋に喉笛を掻っ切られて殺されるのです。
私はあれを見て「やっぱりな…」と思いました。
そういえば、ジョニー・デップも床屋で何人も人を殺めていませんでしたか。
このように、床屋さんの状況はどう考えても異常なのです。

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「今日はどうしますか」と聞かれるのも悩ましい質問です。
こうしてくださいという明確なビジョンがあるわけではないので、何と答えたものかよくわからないのです。
結局、「2,3センチ切ってください」という面白くもなんともない答えに落ち着きます。
しかしこれだけでは敵は許してはくれません。
「サイドは耳にかぶせますか、それとも(耳を)出しますか」とか「もみあげはどうしますか」という尋問が続きます。
あちらはお客様の満足いくようにとお仕事をしているだけなのですが、こちらもどうしたいという希望が特にあるわけでもないので、何か煩わしいのです。

しかし、こうした客側の主体性に乏しい姿勢は時に悲劇を招きます。

創作意欲がある理髪師さんにあたると、理髪師さんがやりたい作品に仕上げられてしまうことがあります。
私は中学生の時、どう見ても新人演歌歌手みたいなエッジの効いた七三頭に仕上げられたことがあります。
二十代で一番髪を伸ばしていた頃、「東京ラブストーリー」の頃の江口洋介みたいなヘアスタイルにされたこともあります。鏡の中のコッカースパニエルみたいになっている自分を見て「違う、違う」と心の中で叫ぶのですが、気の優しい私はドライヤーを当てて熱心に私のクセ毛を伸ばしている女性理髪師さんにとうとう何も言えませんでした。

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 知ってる人は知っている藤正樹          コッカースパニエル

まだ大学生の頃の話ですが、私の友人は床屋(カットハウス)に行くと、「2か月前のボクにして」と注文していると得意げに言っていました。彼もどう注文したらいいのか思案した末にこのオーダーを編み出したのだと思います。
確かに伝わりやすい感じのオーダーですが、ちょっとユニークすぎて真似をする気にはなれませんでした。

もし、「10年前のボク(私)にして」と注文してやってくれる床屋さんがあったら、流行るだろうな…。

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10年前の私。よく滝沢クンとかいう人に間違われました。

実は昨日、近所のQB ハウスで髪を切ってきました。
QBハウスは安いし、散髪の時間もごく短くて済むので私にはうってつけの散髪屋さんです。

QBハウスは全国展開しているチェーンなので、国内いたるところにあります。私は那覇のQBハウスで髪を切ってもらったこともあります。

各地のQBハウスで髪を切ってもらって分かったのですが、理髪師さんの腕には結構ばらつきがあるような気がします。上手な人にやってもらうと、きれいに仕上がるし髪型も長持ちします。

近所のQBハウスにいる60くらいのオジサンがとてもうまくやってくれます。
対応もソフトで丁寧に髪を切ってくれます。
でも、指名はできないので運悪く他の人になってしまうときもあります。
結局、そのオジサンにやってもらえるのは2、3回に1度くらいの割合です。

QBハウスも人事異動があるようなので、いつかオジサンがいなくなるのではと、心配しています。

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行きつけのQBハウス いつのまにかツリーハウスができてました