昨日金曜ロードショーで「風立ちぬ」を見ました。

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主人公の声をアニメーション監督の庵野英明さんがやったことも話題になりましたが、良かったと思います。
ところどころド素人まる出しになってましたが、知的な技術者の声としてはぴったりでした。 

この映画で宮崎監督は、反戦やゼロ戦を描きたかったのではなくて、空を飛ぶことを夢見るもの者の生き方を描きたかったように思います。

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暗雲が立ちこめる時代の流れの中で、堀越二郎は毅然として自分の夢を追い続けました。
もちろん、リアル世界での堀越二郎さんは夢物語の中では生きられなかったようです。
堀越氏はゼロ戦の設計者と知られていますが、本人はいくつかの理由でゼロ戦が嫌いだったのだそうです。

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結核の恋人(妻)が出てくるのは、堀辰雄の「風立ちぬ」の部分ですね。
束の間の新婚生活の後、菜穂子さんは山奥の療養所に戻ります。 
恋愛の最も美しい部分を純度100%で結晶化するには、男か女、どちらか一方がこういう形で成就させるしかありません。 
生きていれば、お互いに知りたくなかった真実を知ることになります。

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喫煙シーンがやたら出てくることも、この映画の話題の一つになりました。

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商業的成功を目論むなら、今のご時世を配慮してこういうシーンは少なかったように思います。
でも、昔の映画って、タバコを吸いながら大事な会話を交わす場面が多かったような気がします。
時代背景から言ってもごく自然なことです。
禁煙団体が映画の喫煙シーンにやいのやいの言うのはちょっと野暮じゃありませんか?
嫌煙団体が目指しているのは、喫煙者との共存ではなくて喫煙文化の撲滅なのかもしれませんが、昔の事実すらも捻じ曲げようとするのはいかがなものでしょう。

ジブリ映画は毎回食事シーンもこだわっています。
今回は、シベリア。

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そう来たか、という感じです。
子供の頃、パン屋の片隅に置いてあったのはよく目にしていました。
これと甘食は、昭和の2大謎菓子パンです。

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 桜木町コティベーカリーのシベリアと甘食

ユーミンのひこうき雲も、この映画の雰囲気によくあっていました。
ただ、この曲の歌詞はよく聞くと不可解です。
ユーミンの若き日の憧れや体験を合体させて、この作品はできたようです。
メインテーマはモーツァルトのアレンジだと思っていましたが、オリジナルなんですね。

支離滅裂な感想になりましたが、この「風立ちぬ」は引退を表明した宮崎駿監督が作りたいものを作った、大人のためのジブリ作品だったのではないでしょうか。

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風立ちぬ/菜穂子 (小学館文庫)
堀 辰雄
小学館
2013-11-06