他にも山手線で痴漢に遭ったり、逗子のゲイビーチで白いブーメランパンツを履いたカップルの熱い視線に見守れながら釣りをしたりと、10~30代の頃は組合系の方と遭遇することはしばしばありました。
国内最古のゲイビーチ 小坪海岸 お尻が気になって釣りどころではなかった。
中年期になるとさすがにそういうことはなくなってきましたが、40代になってちょっとした知り合いになった人もいます。
40代の初め、私は新宿にある整体の学校に通っていました。
カイロプラクティスのクラスで、私はその人に出会いました。
年は同じぐらいで小柄でがっしりした体型、眉が太くて目も鼻も大きい。
声はしゃがれたバリトンで、なんとなく古代中国の武将を思わせるような風貌でした。
(ですので、仮にその人の名前は曹操にします)
そして、曹操は髪が長い。
ソバージュっぽい波打った髪は背中まで伸びていました。
最初の自己紹介では埠頭で重いものを運ぶ仕事をしていたが、腰を痛めたので整体への転職を考えていると曹操は言っていました。
髪が長いことを別にすれば、仕草も話し方もごく普通のオジサンでした。
ロックが好きな人にそんな髪型の人はいるので、ロングヘアもそう気にはなりませんでした。
ですから、その時は曹操が組合の人とは全く思っていませんでした。
特に仲良くなったわけではありませんが、時にはペアになってカイロの実技の練習もしました。
開業したらレーザー脱毛の機械を入れたいと言っていたので、そのことは印象に残っていました。
そのクラスの授業も終了し、私はしばらく曹操と会う機会はありませんでした。
彼に会わなくなってからしばらくして、私は曹操が組合員だということを他の学生に教えられました。
私はその話が嘘だとも思いませんでしたし、そう驚きもしませんでした。
ただ、ロングヘアの謎が解けたような気になりました。
ある日授業を受けていると教室の裏手にある喫煙所からあの特徴のある嗄れ声が聞こえてきました。
ほどなく授業が中休みになったので、私は喫煙所に行きました。
彼が学校を卒業し、店をオープンしたという噂を聞いていたので話を聞きたかったのです。
曹操は久々の再会を喜んでくれ、私に近況報告をしてくれました。
カミング・アウトをして学校中の人間が真実の自分の姿を知っていることはもう織り込み済みのようで、さらっとオネエ専門のレーザー脱毛と骨盤矯正の整体屋をオープンし、滑り出しも好調であることを話してくれました。
オネエは女性の幅広の骨盤に憧れているので、骨盤を横に広げる骨盤矯正(痛そう!)は結構需要があるのだそうです。
これから(有名な)新宿二丁目に営業をかけにいくのだが、ゲイバーにオネエたちが来るにはまだ時間があるので、ここ(学校)で暇つぶしているということでした。
こういうイベントもある町だ
曹操は私に2枚の名刺をくれました。
一つは男性としての普通の名刺。
もう一つは組合員用の名刺。
こちらは名前も女性で、写真の雰囲気もかなりフェミニンでした。
それから、1,2度同じ時間帯に私は曹操と喫煙所で世間話をしました。
彼は以前と全く変わりない様子で話をしてくれるのですが、時折肩口に垂れた毛先を両の手で捩じるような仕草を見せることがありました。
曹操の英雄的風貌とそのガーリーな仕草にはギャップがありすぎ、それだけがちょっと怖かったです。
唐突ですが、仏女優レア・セドゥ ガーリー♪