落人伝説をご存知でしょうか。
源平合戦に敗れた平氏方の人々が人里離れた僻地に逃れ、そこに里を作ったとされる言い伝えです。
こうした平家の隠れ里といわれる場所は全国各地に存在します。

この映画は、その落人伝説のワールド・ワイド、いやスペース・ワイド版です。
あのナチの残党が月に逃げのび、月の裏側に秘密基地を作っていたというところからお話が始まります。

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 この大胆すぎる設定についていけるか否かで、この映画にチャレンジできるかどうかは決められそうです。
 
一言で言えば、アイアン・スカイはSFドタバタコメディです。

ナチをバカにしている以上に、アメリカをコケにしています。
私は何の予備知識もなしにこの映画を見たので、この映画をてっきりアメリカ製だと思っていました。
これだけ自分の国をパロディ化できるのなら、アメリカもまだまだ健全だな、と思っていたのですが、観終わってから調べるとこの映画はフィンランド・ドイツ・オーストラリアの合作映画でした。

他の先進国がアメリカをどう見ているかがわかる、という意味では貴重な映画です。

まず2018年のアメリカ大統領が女性で、一時話題になったペイリン副大統領候補にそっくりです。
月からやってきたナチがアメリカ本土を攻撃した時、戦争を始めたアメリカ大統領は必ず再選されるという理由で、彼女はナチの来襲を喜びます。
密かに所有していたアメリカの宇宙戦艦の名前がジョージ・W・ブッシュ(イラク戦争・アフガン戦争時の大統領)。

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大統領の指名で宇宙防衛軍司令官になった広告代理店の女社長は、「ナチのケツに核ミサイルをかましてれ!」とジョン・ウェィン張りの威勢のいいセリフを決めます。
年寄りや子供がいる月面の居住区への攻撃を部下がためらうと、「アメリカはテロリストと交渉しない」と言い放ち、攻撃命令を出します。

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アメリカ人の心の父 ジョン・ウェイン

アメリカが好戦的な国として描かれていますが、確かにアメリカは映画の世界でも様々な敵と戦っています。
中東やロシア、中国などは比較的現実的な路線ですが、宇宙人や謎の巨大生物、細菌とも戦います。

そう考えれば、月の裏に潜んでいたナチの残党が敵になっても不思議ではありません。

アメリカだけでなく、北朝鮮もバカにされてます。
ヨーロッパやオーストラリアにとっては北朝鮮は遠い国ですから気楽にネタにできますが、隣人である日本ではこれはムリ。

主演のナチの女性科学者が可愛くてセクシーです。
日本での知名度はありませんが、日本人にもうけるタイプの女優さんだと思います。

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 ユリア・ディーツェ

ということで、アイアン・スカイは好きな人は大好きという、ややマニア向けの作品です。
アメリカ人がこの映画を見た時の反応が見てみたい。
北朝鮮が見たら…ミサイル、届かないだろうな…。


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