ヤフ-のサイトで無料配信をしていたので、「ホテル・ルワンダ」と「バトル・ロワイヤル」の二本立てを鑑賞しました。

「ホテル・ルワンダ」を先に見て、視聴者のコメント欄で「バトル・ロワイヤル」を勧めている人がいたので、続けて「バトル・ロワイヤル」も鑑賞。

二つの映画に共通するテーマは、”人間の残虐性”です。
 
見た順番と逆になりますが、まず「バトル・ロワイヤル(2000年制作)」のお話。

「バトル・ロワイヤル」は、年に1度どこかの学校のクラスが選ばれ、隔離された場所で殺し合いをするという法律ができるというありえない設定のお話です。

荒唐無稽なストーリーでありながら、最後まで見てしまうのは、やはり深作欣二監督を始めとする製作スタッフの力量もさることながら、”極限の環境下で人はどこまで残虐になれるか”という実現不可能な実験をしているからだと思います。

とにかく、いきなりバスごと拉致された城岩学園中学3年B組の生徒たちは無人島に連れてこられ、3日間殺し合い、最後の一人だけが生きて帰れるというルールを言い渡されます。

ルール説明の間に担任の先生(ビートたけし)に反抗的な態度を示した生徒二名が先生に殺害されてしまいます。

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この不条理な現実を受け入れるしかないと観念した生徒たちはわずかな水と食料と武器を与えられ無人島内でバトルを開始します。

ここから先、様々なタイプの人間が様々な行動を起こします。

とにかく生き残りたい、死にたくないという思いで、級友を殺すもの(大多数がこのカテゴリーに属しますが、ここにも自分から殺しにいく攻めのタイプと殺されそうになったので殺す守りのタイプがいます)。
自殺するもの。
平和と協調を呼びかけるもの。
無人島からの脱出を試みるもの。
自ら参加を志願して殺戮を繰り返すもの(桐山という転校生がそうでしたが、殺人に快感を覚えるサイコパスと呼ばれるタイプなのかもしれません)。

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生き残れる人間は一人しかいないので、結局生徒たちは自決するか、殺されるかでどんどん死んでゆきますが、殺さないと殺されるという環境でも、人は一律に殺人ロボットになるわけはなく、その態度と行動にはバラエティがありました。

一方、「ホテル・ルワンダ(2004年制作)」です。
これは現実に起きた事実をもとに作られた映画です。

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一言でいえば、1994年にルワンダで起きたフツ族とツチ族の内紛ですが、わずか100日の間にツチ族はフツ族によって50~100万人殺害されました。

ここに至るまではもちろん複雑な経緯があります。
ベルギーが植民地支配した際に、少数民族のツチ族を支配層にしたてフツ族を隷属させるという間接統治を行ったことが大きな軋轢を生んだ原因のようです。
それまでは民族間での交流もあり、婚姻も普通に行われていました。

フツ族の溜まりに溜まった恨みつらみは、フツ族出身の大統領暗殺によって爆発します。

「高い木を切れ」という合言葉を合図に、フツ族の民兵たちが武器を手にしてツチ族の虐殺を開始します。
武器といってもその多くはマチェ―テと呼ばれる山刀とマスと呼ばれる釘バットです。
こんな原始的な武器で、ツチ族は切り刻まれ、殴り殺されていったのです。
男はもちろん、女も子供も例外はなく、フツ族でも穏健派と呼ばれる人々も殺されたそうです。
女性の多くは強姦されてから、殺されたそうです。

この映画を見ると、架空のお話であるバトル・ロワイヤルの方がよほど救いがあったような気がしてきます。
しかし、これがまぎれもなく現実世界の話なのです。

歴史上の大量虐殺といえば、ナチスドイツによるユダヤ人のホロコーストが有名です。
第二次大戦中550~600万人のユダヤ人が殺害されたと言われています。

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 映画「シンドラーのリスト」より

1975~1979年、ポルポト政権下のカンボジアでは200~300万人のカンボジア人が虐殺されました。
当時のカンボジアの人口は800万人弱ですから、殺戮によって人口の3分の一が消えたことになります。

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 映画「キリング・フィールド」より

悲しいことですが、人間は人種を問わず何らかの環境下では、いかんなくその残虐性を発揮する動物のようです。
大量虐殺を行った歴史上の支配者たち

ヒト以外に同族殺しをする動物としては、チンパンジーがいます。
オスのチンパンジーの90%は生涯の間に1度は同族殺しに関わっているそうです。
一方ボノボはチンパンジーの仲間ですが、彼らは極めて友好的で平和な社会集団を形成しているようです。
どちらも人間と最大99%DNAが同じだそうです。
(参照:人間は本来残忍なのかー祖先のチンパンジーに見る本性

社会の雲行きが怪しくなると、人間には残忍な本性をむき出しにしてしまう潜在性があることを否定できないのは残念ですが、救いはこの「ホテル・ルワンダ」のホテル支配人やナチ政権下で多くのユダヤ人を救ったシンドラーのように、異常な環境の下でも良心と勇気を持ち続けた人間もいたということでしょうか。

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 映画「シンドラーのリスト」より

2本の映画を見て、そんなことを考えさせられました。