以前は3月は嫌いな月でした。

暦の上では春なのに、依然として寒い。
晴天が多い真冬に比べ、どんよりとした曇り空が多くなります。、
雨や雪が降りやすく、強い風が吹くこともしばしば。

不安定な天候は、人間の心身にも影響を与えます。
昔から春先は「木の芽どき」と呼ばれ、体調を崩しやすい時期とされています。
気持ちも憂うつになりやすく、年間で自殺者数が最も多い月でもあります。

不安定で、憂うつな影に覆われている3月。
人間に例えるなら、思春期の少年のような月です。

一方で、3月は寒さと暖かさが戦う時でもあります。

「三寒四温」という言葉があります。
3日寒さが続き、4日暖かい日が来る。
これを繰り返しながら、少しずつ本格的な春を迎えます。

そう、最後には必ず暖かな春が勝つ戦いです。
そう考えれば、3月は悪い月ではありません。

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 今日とりたての3月の空

明け方に目を覚まして、トイレに行った時、
小窓から入りこんだ外気に春を感じることがあります。
草花から微生物に至るまで、あらゆる命を孕(はら)んでいる土の匂いです。
この時期だけにかぐことができる春の香りです。

3月というと、私はベトナム戦争を描いた映画「プラトーン」のワンシーンを思い出します。
それは満期除隊を目前にした黒人兵が主人公に語る故郷の様子です。
「3月のアラバマ 松の木の匂い 川辺を歩く女の子たち…」
情景を語るセリフはたったこれだけですが、まるで俳句のようにアメリカ南部アラバマの魅力が伝わります。

久しぶりに晴れた3月の朝。
ふりそそぐ日射しに輝く梅の花がとてもラブリーです。